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GUIDE ・ 法制度

個人情報保護法が改正、AI学習はどう変わる?中小企業の実務ポイント

最終更新:2026年7月18日

30秒でわかる要点

  • 2026年7月10日、令和8年改正個人情報保護法が成立(4月7日閣議決定・国会提出→参議院本会議で可決)。専門解説によれば7月17日公布。
  • ・改正は「データ利活用の推進(緩和)」と「保護の強化」の両面。AI学習に効くのは、統計目的での同意不要特例公開された要配慮個人情報の取得緩和
  • ・同時に、生体データ(顔特徴など)の規制・16歳未満のこども・課徴金制度など保護も強化。
  • 施行は「公布から2年以内で政令が定める日」=具体日は未確定(おおむね2028年までに施行見込み)。
  • ・中小企業は、生成AIに個人情報を入力する際の利用目的の確認・学習オプトアウト・社内規程を今のうちに点検を。

改正の全体像と、成立までの経緯

今回の令和8年改正は、大きく①適正なデータ利活用の推進 ②個人の権利利益の保護強化 ③課徴金制度の導入 ④執行の実効化の4本柱で構成されます。個人情報保護委員会(PPC)の「いわゆる3年ごと見直し」の議論(2023年11月〜、2024年6月の中間整理、同12月の検討会報告書)を経て、2026年4月7日に改正法案が閣議決定・国会提出され、衆参の審議を経て2026年7月10日の参議院本会議で可決・成立しました。2025年の通常国会への提出は一度見送られており、成立は2026年です。

※公布日(2026年7月17日)・法律番号(令和8年法律第56号)は複数の法律事務所解説が一致して記載していますが、当サイトは官報原本の逐一確認までは行っていません。正確な条番号・公布内容は官報またはe-Gov法令検索でご確認ください。

AI学習を後押しする2つの緩和

① 統計作成等に係る「本人同意を不要とする特例」の新設。統計の作成などを行う第三者へ個人情報を提供・利用する場合等について、公表義務や書面での合意といった要件の下で、本人の同意を不要とする仕組みが設けられます。統計処理やAIモデル開発の場面でのデータ利活用を後押しする規制緩和と位置づけられています。

② 公開されている要配慮個人情報の取得緩和。現に公開されている要配慮個人情報(病歴・信条など)を、統計作成等にのみ利用されることが担保されるなどの条件の下で、本人同意なく取得できるようになります。報道で「病歴や信条も本人同意なく提供可能に」「AI開発促進へ個人情報取得の規制緩和」と伝えられたのは、この2点を指しています。

同時に強化された「保護」の側面

緩和だけではありません。AIの文脈で併せて押さえたい保護強化として、特定生体個人情報(顔の特徴データなど)の規制対象化(周知義務や利用停止請求要件の見直し)、16歳未満のこどもの個人情報の保護強化、そして課徴金制度の導入(違法な取扱いで財産上の利益を得た場合等。過去に違反歴があると加算されるとされる)が盛り込まれています。データを「使いやすくする」一方で、「使い方を誤ったときのペナルティ」も重くなる改正です。

生成AIを業務で使う中小企業の実務注意

改正の施行前でも、現行法とPPCの注意喚起から実務上の勘所は明確です。PPCは2023年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」で、次の点を求めています(同日、OpenAI社にも直接注意喚起)。

  • プロンプト入力の統制:個人情報を含むプロンプトを生成AIに入力する場合は、「特定した利用目的の達成に必要な範囲内か」を事前に確認する。範囲外なら利用目的の特定・通知公表を見直す。
  • 要配慮個人情報:病歴・信条などをAIに入力・取得する場面は原則として本人同意が必要(現行)。改正後は要件下で緩和されるが、要件充足の確認が前提。
  • 学習利用リスク:入力データが提供側でモデル学習に使われる設定だと、意図しない目的外利用になりうる。学習オプトアウト設定・エンタープライズ契約(学習不使用)を確認する。
  • 社内規程の整備:入力禁止情報の明確化、顧客・従業員の個人情報の取扱い、利用ログなどを定めたルールを用意する。
  • 改正対応の準備:課徴金導入で違反時の金銭的リスクが増す。施行までに、生体情報・16歳未満データ・課徴金対応を含めて運用を点検する。

※「社内規程の整備」「学習オプトアウトの確認」などの具体運用は、PPC注意喚起の趣旨に沿った一般的な実務指針であり、法文上の義務そのものとは区別してお考えください。

海外との違い(参考)

EUでは2024年8月に発効したEU AI ActがリスクベースでAIそのものを段階的に規制していますが、日本の令和8年改正は包括的なAI規制法ではなく、あくまで個人情報保護法の枠内でのデータ利活用緩和+保護強化である点が構造的な違いです。EUのGDPRは個人データ処理に適法根拠を求めており、今回の「統計目的の同意不要特例」は研究・統計例外と論点が近いものの、制度の枠組みは別です。

本記事のご利用にあたって

本記事は2026年7月時点で確認できた公式一次情報等をもとに一般的な情報を提供するもので、法的助言ではありません。条文の正確な内容・施行日・具体的な適用は、官報・e-Gov法令検索・個人情報保護委員会の公表資料、および必要に応じて専門家(弁護士等)にご確認ください。施行日は政令未制定のため確定していません。

主な出典

  • ・個人情報保護委員会「改正法案の閣議決定について(令和8年4月7日)」 ppc.go.jp/news/press/2026/260407/
  • ・参議院 議案情報「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」(提出・審議・成立日)
  • ・個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(令和5年6月2日)」 ppc.go.jp
  • ・個人情報保護委員会「いわゆる3年ごと見直しについて」 ppc.go.jp/personalinfo/3nengotominaoshi/
  • ・報道(改正法成立・規制緩和の内容)/主要法律事務所の逐条解説

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よくある質問

Q. 個人情報保護法の改正はもう成立したのですか?

A. はい。「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」(令和8年改正)は、2026年7月10日の参議院本会議で可決され成立しました(2026年4月7日に閣議決定・国会提出、参議院議案情報で確認)。複数の専門解説によれば2026年7月17日に公布されたとされます。ただし施行日は「公布の日から起算して2年を超えない範囲内で政令で定める日」とされ、具体的な施行日は今後の政令で決まる(現時点で未確定)ため、実際に効力を持つのは概ね2028年までの間の政令で定める日からです。

Q. 今回の改正で、AIの学習にとって何が変わりますか?

A. データ利活用を後押しする緩和が2点あります。①統計の作成などを行う第三者へ個人情報を提供・利用する場合について本人同意を不要とする特例の新設、②現に公開されている要配慮個人情報(病歴・信条など)を、統計作成等にのみ利用されることが担保されるなどの条件の下で本人同意なく取得できるようにする緩和です。報道が『病歴や信条も同意なく提供可能に』『AI開発促進へ規制緩和』と伝えたのはこの部分です。一方で保護強化(生体データ規制・16歳未満のこども・課徴金)も同時に入っています。

Q. 生成AIに顧客や従業員の個人情報を入力しても大丈夫ですか?

A. 個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、個人情報を含むプロンプトを生成AIに入力する場合は『特定した利用目的の達成に必要な範囲内か』を十分に確認するよう求めています。範囲外の利用になりうる場合は利用目的の見直しが必要です。また、入力データが提供側でモデルの学習に使われる設定だと意図しない目的外利用になりうるため、学習オプトアウトの設定やエンタープライズ契約(学習に使わない条件)の確認が実務上重要です。要配慮個人情報の入力・取得は原則本人同意が必要です。

Q. 中小企業は今、何を準備すべきですか?

A. ①生成AIに入力してよい情報/禁止する情報を定めた社内規程の整備、②要配慮個人情報・顧客個人情報の取扱いルールの明確化、③利用するAIツールの学習オプトアウト設定・契約条件の確認、④改正で導入される課徴金制度をふまえた違反リスクの点検、が挙げられます。施行までに時間があるうちに、生体情報・16歳未満データ・課徴金対応を含めて自社の運用を見直しておくと安心です(これらはPPC注意喚起の趣旨に沿った一般的な実務指針で、条文上の義務そのものとは区別してお考えください)。